Thursday, December 27, 2012

2012年の○冊(政治思想分野)


例年,形だけでも「~年の三冊」を書いて新年を迎えているのですが,今年は例年以上に本を読んでいないので(毎年そんなことを言っているような気もしますが),砂原先生を真似て,政治思想史・政治理論分野での収穫を振り返るという仕方にしたいと思います.

もっとも,研究動向の中に位置付けたコメントをするような力量はないので,今年刊行された主な政治学文献のリストを眺めながら,目についたトピックだけさらって書きたいと思います.時系列でもありません.







自分の専門に近いところから行くと,デモクラシー論についての重要な共著テキスト/論文集が年頭に出ています.前者は思想史から理論,地方政治から国際政治まで幅広い領域での学術的議論を見渡すことのできる中上級者向けテキストです.後者は理論的関心を保ちながら様々な分野での実践の試みをとりまとめており,日本での討議/熟議デモクラシー論の蓄積と成熟を示す一冊になっています.今年は国政で討論型世論調査が行われたこともあり,今後このテーマでの研究はますます増えてくるのではないでしょうか.



こちらもテキストで,放送大学教材をもとにした学部生向け教科書とのことですが,質量ともに重厚で,大学院生も必携という感じでしょうか.私自身,事あるごとに頁をめくってはお世話になることと思います.なお,川出先生は白水社のルソー・コレクションの選もなさっています.

テキストで言うと,他にも幾つかありますので順番に.

  • 苅部直『政治学』岩波書店(ヒューマニティーズ).


  • 伊藤恭彦『政治哲学』人文書院(ブックガイドシリーズ 基本の30冊).


どちらも,名著を紹介しながら政治学・政治哲学への導入を図るというコンセプトでは共通しています.苅部先生の方は想定読者に置いている大学一年生には難しいんだろうと(レポート採点の経験上からして)思うわけですが,味わい深いエッセイです.伊藤先生はこれ以外に新書も刊行されています.



こちらもテキストの側面を持った論文集ですが,応用倫理学との交差領域にも踏み込んだ構成が特徴かと思います.執筆者は皆さん「気鋭」とか「俊英」といった形容が似合う方々のような気がします.執筆陣に名を連ねる五野井郁夫さんの『デモとは何か』や児玉聡さんの『功利主義入門』も話題になりました.政治哲学と言えば,サンデルブームの余波がまだまだ続いているのか,小林正弥/菊池理夫 (編) 『コミュニタリアニズムのフロンティア』などの研究書も出ています.

  • 川崎修/杉田敦 (編) 『現代政治理論』新版, 有斐閣(有斐閣アルマBasic).




  • 川出良枝/谷口将紀 (編) 『政治学』東京大学出版会.


上二冊はいずれも定番テキスト.アルマの政治理論は2006年に出たものの新版で,「環境と政治」の章が加わっています.政治学講義は初版刊行が1999年ということで10年以上経っての改訂.懐かしさも感じますが,数少ない単著テキストの価値は未だ無くなっていないのでしょう(今年文庫化されたダール『現代政治分析』を再読しても強く感じます).三つ目はその佐々木先生の門下の方々によるもの.とっつきやすい良テキストだと思います.

テキストと言えば東大出版会の「現代政治学叢書」が遂に完結しましたが,風行社の「政治の発見」シリーズも遅れていた6巻が出版され,全巻が揃いました.



原発の問題など,世代間倫理に関心のある人にはおすすめします.このシリーズは内容もさることながら,ハンディかつカラフルなので,本棚に並んでいても目に楽しいです(と言いつつまだ全巻揃えていないのですが…).

どうも,テキストや論文集を挙げているうちに随分長くなってきてしまいました.本来は博論ベースの単著など研究書をもっと紹介するべきなのでしょう.その種のもので目立ったところを挙げると以下でしょうか.









いずれも各分野での開拓的・先端的研究の成果だと思います.

白川さんの本で扱われているリベラル・ナショナリズムは最近のトレンドの一つで,富沢克 (編) 『「リベラル・ナショナリズム」の再検討』などの研究書も今年出ています.分配的正義の問題はもちろん,自民党の憲法改正案が話題になったりしている状況では,憲法との関係でもナショナリズム論が一層盛り上がることになるのではないかと思います.山崎先生の方は問題関心が近いこともあり,そのうちじっくりと格闘しなければならないと思っていますが,まだ果たせておりません.

翻訳も含めればまだまだ沢山ありますが,それではきりがないのでこのぐらいにします.よいお年を.

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