Politics and Theories
Tuesday, March 28, 2017
2016年度の研究活動
今年度の研究として公に行なったものは,2回の学会報告と2本の論文公刊(うち,査読論文1本)です.そのほか,博士学位申請論文を執筆・提出し,審査の結果,博士号を取得しました.
まず5月に,政治思想学会の自由論題セッションで「企業経営における政治的なもの――経済権力の民主化へ向けた予備的考察」と題して報告しました.
その後,9月末に博士論文を提出し,10月に日本政治学会の企画分科会で「分割して統治させよ――ステークホルダー・デモクラシーの複数性」と題した報告を行ないました.
12月には,博士論文の審査が行なわれたほか,査読付き論文「影響を受ける者が決定せよ――ステークホルダー・デモクラシーの規範的正当化」が掲載された『年報政治学』2016年2号が公刊されました.
そして3月に「原発事故被災地の再生と中間貯蔵施設――民主的合意の形成へ向けて」を寄稿した『サステイナビリティ研究』7号が刊行されました.
学位を取得したことで4月からは色々と環境が変わることになりますが,来年度も引き続きがんばります.
掲載告知: 「原発事故被災地の再生と中間貯蔵施設――民主的合意の形成へ向けて」
所属する法政大学サステイナビリティ研究所の学術誌に寄稿した特集論文が公刊されました.図書館などへの配架はもう少し先になりますが,全文を研究所HPでご覧頂けます.
- 松尾隆佑 [2017] 「原発事故被災地の再生と中間貯蔵施設――民主的合意の形成へ向けて」『サステイナビリティ研究』7: 23-43.
- 1 はじめに――土地と結びついた人間の復興
- 2 政策枠組みの検討
- 2.1 汚染廃棄物の処理枠組み
- 2.2 中間貯蔵施設の建設計画
- 3 問題構造の分析
- 3.1 被災者の分断と広義の加害
- 3.2 不信を強化する不透明性
- 3.3 技術的合理性の偏重
- 3.4 責任主体の曖昧さと当事者意識の持ちにくさ
- 4 民主的合意の形成へ向けて
- 4.1 多段階プロセスと広域協議
- 4.2 環境安全委員会の活用
- 5 おわりに
内容としては,2016年2月に研究所の主催する公開研究会で行なった報告をもとに,その後の動きなどをフォローしながら論文化したものです.民主的な合意形成の条件を探るというかたちでデモクラシー理論からの問題意識は多少感じ取れると思いますが,テーマとしては完全に環境社会学で,分析視角なども舩橋先生の議論に多くを負っているので,見よう見まねで書いてみたという印象は拭えないでしょうか.
ただ現在進行形の重要な課題を扱っておりますので,ぜひご一読頂けると幸いです.今後も関連するテーマで学会報告などを行なう予定があり,そちらではやはり見よう見まねで政策過程分析のようなことも試みるつもりです.
Friday, December 30, 2016
2016年の政治思想
2016年に刊行された主な政治思想書を,コメントを付さずに羅列します.時系列ではなく,大まかに研究書(単著,論文集),一般書・教科書,翻訳の順に並べています.一昨年以前のものはこちらをご覧ください(2015年はありません).手元にあるメモを頼りにしていますので,抜けが多いと思いますが,ご了承ください.
西洋政治思想
- 武井敬亮『国家・教会・個人――ジョン・ロックの世俗社会認識論』京都大学学術出版会(プリミエ・コレクション 73).
- 戸澤健次『イギリス保守主義研究』成文堂(愛媛大学法学会叢書18).
- 神山伸弘『ヘーゲル国家学』法政大学出版局.
- 対馬美千子『ハンナ・アーレント――世界との和解のこころみ』法政大学出版局.
- 宇野重規『政治哲学的考察――リベラリズムとソーシャルの間』岩波書店.
- 猪木武徳『自由の条件――スミス・トクヴィル・福澤諭吉の思想的系譜』ミネルヴァ書房(叢書・知を究める 8).
- 山下重一『J・S・ミルとI・バーリンの政治思想』泉谷周三郎 (解説), 御茶の水書房.
- 中野勝郎 (編) 『境界線の法と政治』法政大学出版局(法政大学現代法研究所叢書 40).
- 仲正昌樹『ハンナ・アーレント「革命について」入門講義』作品社.
- 宇野重規『保守主義とは何か――反フランス革命から現代日本まで』中央公論新社(中公新書 2378).
- 堤林剣『政治思想史入門』慶応義塾大学出版会.
- フリードリッヒ二世『反マキアヴェッリ論』大津真作 (監訳), 京都大学学術出版会(近代社会思想コレクション 17).
- プーフェンドルフ『自然法にもとづく人間と市民の義務』前田俊文 (訳), 京都大学学術出版会(近代社会思想コレクション 18).
- ニコラス・フィリップソン『デイヴィッド・ヒューム――哲学から歴史へ』永井大輔 (訳), 白水社.
東洋政治思想
- 高山大毅『近世日本の「礼楽」と「修辞」――荻生徂徠以後の「接人」の制度構想』東京大学出版会.
- 松田宏一郎『擬制の論理 自由の不安――近代日本政治思想論』慶應義塾大学出版会.
- 河野有理『偽史の政治学――新日本政治思想史』白水社.
- 何鵬挙『政道と政体――近代日本における中国観察』勁草書房(現代中国地域研究叢書).
- 嵯峨隆『アジア主義と近代日中の思想的交錯』慶應義塾大学出版会.
- 米原謙 (編) 『政治概念の歴史的展開 9巻 「天皇」から「民主主義」まで』晃洋書房.
- 三谷太一郎『戦後民主主義をどう生きるか』東京大学出版会.
- 朴忠錫『韓国政治思想史』飯田泰三 (監修), 井上厚史/石田徹 (訳), 法政大学出版局.
国際政治思想
- 篠田英朗『集団的自衛権の思想史――憲法九条と日米安保』風行社(風のビブリオ 3).
政治哲学・政治理論
- 若松良樹『自由放任主義の乗り越え方――自由と合理性を問い直す』勁草書房.
- 金野美奈子『ロールズと自由な社会のジェンダー――共生への対話』勁草書房.
- 山本圭『不審者のデモクラシー――ラクラウの政治思想』岩波書店.
- 後藤玲子 (編) 『正義』ミネルヴァ書房(福祉+α).
- 田中拓道 (編) 『承認――社会哲学と社会政策の対話』法政大学出版局.
- 市田良彦/王寺賢太 (編) 『現代思想と政治――資本主義・精神分析・哲学』平凡社.
- 森政稔『迷走する民主主義』筑摩書房(ちくま新書 1176).
- ヒレル・スタイナー『権利論――レフト・リバタリアニズム宣言』浅野幸治 (訳), 新教出版社.
- 広瀬巌『平等主義の哲学――ロールズから健康の分配まで』齊藤拓 (訳), 勁草書房.
- オノラ・オニール『正義の境界』神島裕子 (訳), みすず書房.
- ロナルド・ドゥオーキン『民主主義は可能か? 新しい政治的討議のための原則について』水谷英夫 (訳), 信山社.
- イリヤ・ソミン『民主主義と政治的無知――小さな政府の方が賢い理由』森村進 (訳), 信山社.
- ジョナサン・ウルフ『「正しい政策」がないならどうすべきか――政策のための哲学』大澤津/原田健二朗 (訳), 勁草書房.
※2017年1月2日,追記.
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