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Friday, December 30, 2016

2016年の政治思想


2016年に刊行された主な政治思想書を,コメントを付さずに羅列します.時系列ではなく,大まかに研究書(単著,論文集),一般書・教科書,翻訳の順に並べています.一昨年以前のものはこちらをご覧ください(2015年はありません).手元にあるメモを頼りにしていますので,抜けが多いと思いますが,ご了承ください.


西洋政治思想













  • フリードリッヒ二世『反マキアヴェッリ論』大津真作 (監訳), 京都大学学術出版会(近代社会思想コレクション 17).
  • 反マキアヴェッリ論 (近代社会思想コレクション)




東洋政治思想








  • 朴忠錫『韓国政治思想史』飯田泰三 (監修), 井上厚史/石田徹 (訳), 法政大学出版局.
  • 韓国政治思想史


国際政治思想



政治哲学・政治理論




  • 後藤玲子 (編) 『正義』ミネルヴァ書房(福祉+α).
  • 正義 (福祉+α)






  • オノラ・オニール『正義の境界』神島裕子 (訳), みすず書房.
  • 正義の境界




※2017年1月2日,追記.

Wednesday, May 25, 2016

御礼: 山本 [2016]



著者の山本さんよりご恵贈賜りました.ありがとうございます.

山本さんとは主に学会などでお会いすることが多いのですが,今秋の日本政治学会では分科会をご一緒させて頂くことになり,何かとお世話になっております.

博士論文の待望の書籍化ということで,個別には既発表の雑誌論文などで拝読している部分もあるかと思いますが,まとまったかたちで読めるようになったことで理解を深められそうです.勉強いたします.

タイトルの「不審者」については,帯に引かれている次の記述が印象的です.それは「私たちのすぐかたわらに佇む不気味な隣人」,「たとえば私たちがよく目にするような、デモを横目に立ち行く彼/彼女であり、リズムに合わせてつま先を揺らす警官であり、遠慮がちに端のほうでコールを口ずさむ私たちのことでもある」.


  • 目次
    • 序章 デモクラシー、われら同質なるもの [1]
      • 1 「人民」の両義性とデモクラシー [1]
      • 2 終わりなき同質化と異質なもの [5]
      • 3 本書の主題と先行研究 [9]
      • 4 本書の構成 [18]
    • 第一部 エルネスト・ラクラウのポスト・マルクス主義
      • 第一章 ポスト・マルクス主義の系譜学――ラディカル・デモクラシーの足音 [27]
        • 1 ポスト・マルクス主義前夜 [27]
        • 2 マルクス主義国家論との対話 [29]
        • 3 ラクラウのイデオロギー論――階級還元主義批判と人民=民主主義的審問 [33]
        • 4 ポピュリズム論への展開 [38]
        • 5 ポスト・マルクス主義の系譜学 [42]
        • 6 「釈明なきポスト・マルクス主義」のために [46]
      • 第二章 ポスト・マルクス主義の方法論 [51]
        • 1 マルクス主義における本質主義批判とヘゲモニー [52]
        • 2 言説 [60]
        • 3 ポスト・マルクス主義への不満と不安 [69]
        • 4 ポスト基礎付け主義 [74]
        • 5 ラディカルな唯物論 [79]
      • 第三章 政治と普遍的なるものの行方 [85]
        • 1 普遍主義の黄昏のなかで [85]
        • 2 『ヘゲモニー』における普遍主義への懐疑 [89]
        • 3 普遍性の構築 [93]
        • 4 普遍化しきれないものの残余 [101]
        • 5 普遍と個別のはざまで [106]
      • 第四章 敵対性と異質なもの [111]
        • 1 敵対性への問い [111]
        • 2 危機の時代におけるヘゲモニーと敵対性 [114]
        • 3 転位と構成的外部 [118]
        • 4 敵対性の相対化 [126]
        • 5 同質性と異質性の閾 [130]
      • 補論 政治的オプティミストの弁明――ポスト・マルクス主義とプラグマティズム [141]
        • 1 はじめに [141]
        • 2 ポスト・マルクス主義とプラグマティズム [144]
        • 3 基礎付けへの二つの態度 [149]
        • 4 プラグマティズムを徹底化すること [154]
        • 5 政治的作為へのオプティミズム [158]
    • 第二部 不審者のデモクラシーに向けて
      • 第五章 アゴニズムの隘路――シャンタル・ムフの闘技的民主主義について [165]
        • 1 ラディカル・デモクラシーとは何か [166]
        • 2 シャンタル・ムフの闘技的民主主義 [171]
        • 3 政治的なものの沈黙とアゴニズムの隘路 [180]
      • 第六章 不審者のモンタージュ [187]
        • 1 異質な不審者の出現 [187]
        • 2 参加デモクラシー再訪 [190]
        • 3 不審者の存在論 [194]
        • 4 不審者のモンタージュ [204]
      • 第七章 不審者のデモクラシー――ポピュリズム/同一化/象徴的代表/動員 [211]
        • 1 同一性の政治学を牽制する――現代政治理論の二潮流 [212]
        • 2 ポピュリズムとデモクラシーの二縒り理論 [220]
        • 3 ラクラウのポピュリズム論――政治的なものの回帰 [230]
        • 4 同一化と象徴的代表 [238]
        • 5 参加モデルから動員モデルへ [246]
      • 終章 政治的作為と偶発性――戦略と政治的なもの [261]
        • 1 ラディカルなものの責務 [261]
        • 2 政治的作為と偶発性のアポリア [265]
        • 3 付帯と偶発 [270]
        • 4 付帯の政治と偶発性の政治 [272]
        • 5 民主主義理論から民主主義戦略へ [276]
        • 6 戦略と政治的なもの [282]


Thursday, April 7, 2016

御礼: 源島 [2016]


著者の源島さんからご恵送頂きました.ありがとうございます.

前作に引き続きアイデアの政治によるブレア政権期の研究で,思惑の異なるアクター間での「協働」を可能にした条件を,言説分析を通じて明らかにするものになっています.

今回は特に「解釈主義」の立場が明確に打ち出されており,方法的意識がより鮮明になっているように(専門外ながら)感じました.ご研究の更なる展開が期待されます.

  • 源島穣 [2016] 「イギリスの社会的包摂をめぐるアイディア――パートナーシップ制度参加に向けて」『国際公共政策論集』37: 67-84.
    • はじめに
    • 第1章 ガバナンスの展開とパートナーシップ制度
      • 1、ガバナンスの展開―「効率性」から「協働」へ―
      • 2、パートナーシップ制度とその問題点
    • 第2章 分析枠組
      • 1、どのようなアイディアを析出するか
      • 2、アイディア析出の方法
    • 第3章 協働に対する政府、地方政府、ボランタリー・セクターの認識
      • 1、政府
      • 2、地方政府、ボランタリー・セクター
    • 第4章 アイディアの生成
      • 1、「社会関係資本」の論理
      • 2、「文化の変革」の論理
      • 3、アイディアの確定
    • 結論と今後の課題

Tuesday, December 22, 2015

御礼: 友澤 [2015]


著者の友澤さんから頂戴しました.ありがとうございます.

友澤さんにはサステイナビリティ研究所でお世話になっています.

最近あるところで話した際,「拒絶する主体」という言葉を否定的な響きをもって使った身としては,「拒絶することの創造性」という魅力的な捉え方に興味をそそられました.


  • 友澤悠季 [2015] 「「公害反対運動」の再検討――拒絶することの創造性に着目して」『同時代史研究』8: 18-34.
    • I 本稿の課題
    • II 「公害」と「公害反対運動」をめぐる史的前提
      • 1 高度成長は「公害」を前提とした
      • 2 「公害反対運動」への社会的な期待
      • 3 「公害反対運動」をめぐる資料状況と課題
    • III 運動の動機とそのゆくえ――地域で生きること
      • 1 「百年公害」を断ち切る挑戦――「渡良瀬川鉱毒根絶太田期成同盟会」の運動
        • (1)初期の運動と世論の盛衰
        • (2)毛利田での被害と運動の再燃
        • (3)カドミウムの検出と調停申請
        • (4)「鉱毒根絶はこれから始まる」
        • (5)伝える相手の変化
      • 2 不安と信頼をめぐる葛藤――原発立地町での原発反対運動
        • (1)「公害対策」から外された放射性物質と原発反対運動
        • (2)福島県沿岸での「公害」と「原子力」
        • (3)「原子力の危険性」を理解してもらう困難
        • (4)不安と信頼との葛藤
      • 3 「美しい郷土」の原風景――広田湾埋め立て開発反対運動が守ろうとしたもの
        • (1)岩手県陸前高田市に訪れた「地域開発」の契機と異議申し立て
        • (2)市民の多様な反応
        • (3)続けられた地域開発の議論
        • (4)「何十年、何百年」という時間への出発
    • IV 拒絶することの創造性――「される側」の論理から
      • 1 「される側」からの出発
      • 2 拒絶することが生み出す創造性

Monday, September 21, 2015

御礼: 山崎 (編) [2015]



編者である山崎望先生より,ご恵送たまわりました.ありがとうございます.

本書は,ヘイトスピーチデモを前にした編者の「何か大きく異なるものが眼前に現れている、という衝撃」をもとに,「従来のナショナリズムにはない何かが「ある」、もしくは「欠けている」」,新たな形態としての「奇妙なナショナリズム」を,政治学者・社会学者が多角的に分析した論文集となっています(「おわりに」より).

山崎先生は序論,8章および「おわりに」を執筆されています.また,研究会などでたびたびお世話になっている清原悠さんが2章を執筆されています.


  • 目次
    • 序論 奇妙なナショナリズム?(山崎望) [1]
    • 第1章 ネット右翼とは何か(伊藤昌亮) [29]
    • 第2章 歴史修正主義の台頭と排外主義の連接――読売新聞における「歴史認識」言説の検討(清原悠) [69]
    • 第3章 社会運動の変容と新たな「戦略」――カウンター運動の可能性(富永京子) [113]
    • 第4章 欧州における右翼ポピュリスト政党の台頭(古賀光生) [139]
    • 第5章 制度化されたナショナリズム――オーストリア多文化主義の新自由主義的転回(塩原良和) [165]
    • 第6章 ナショナリズム批判と立場性――「マジョリティとして」と「日本人として」の狭間で(明戸隆浩) [197]
    • 第7章 日本の保守主義――その思想と系譜(五野井郁夫) [233]
    • 第8章 「奇妙なナショナリズム」と民主主義――「政治的なもの」の変容(山崎望) [277]
    • おわりに(山崎望) [305]


序論では,既存のナショナリズムの類型が整理された上で,本書の分析対象となる現代ナショナリズムの「奇妙さ」が複数提示されています.とりわけ,「少数派ではなく、マジョリティこそがむしろ様々な層における「被害者」(もしくは潜在的な被害者)」としての自己定義をするようになっているという指摘(12頁)には,大変興味をそそられるところです.

また8章では,奇妙なナショナリズムへの対応にあたっての困難を乗り越える可能性が「民主主義の複線化」という視角から示されており,強く共感するとともに,同じくデモクラシー理論を研究する者として取り組むべき課題を再認識させて頂くことができました.

まだ全部を読めているわけではないのですが,理論と現実,思想と運動,過去と現在,日本と海外,さまざまな面からナショナリズムの変容が検証されているという意味で,繰り返し参照されるべき重要な一冊かと思います.じっくりと味読させて頂きます.

Wednesday, February 25, 2015

御礼: 源島 [2015]


著者の源島さんからご恵送頂きました.ありがとうございます.

ブレア政権下での社会的包摂の理念がなぜワークフェア政策へと帰結したのかを,戦後イギリスの「就労規範」に着目して解き明かそうとするもので,アイデアの政治のアプローチによる最新の研究成果かと思います.

源島さんとは同時期に法政へ入学した間柄ですので(修士課程か博士課程かの違いはありましたが),筑波に進学されてからも着実に研究を進められていることに感慨深く拝読しました.


  • 源島穣 [2015] 「イギリス福祉国家改革における社会的包摂の論理」『国際公共政策論集』35: 51-67.
    • はじめに
    • 第一章 社会的排除/包摂に関する議論
    • 第二章 労働党の社会的包摂政策
    • 第三章 ベヴァリッジ報告が提出した就労規範
      • (1)ベヴァリッジによる福祉国家――福祉「国家」と「個人」
      • (2)福祉国家の危機の時期――福祉「国家」と「個人」の関係の継続
    • 第四章 イギリスにおける社会的排除の言説状況
      • (1)排除に対する「当事者」の視点
      • (2)福祉「国家」から福祉「社会」へ
    • 第五章 完全雇用を取り戻す――「福祉社会」と「個人」
    • 結論と含意


Friday, January 30, 2015

御礼: 河合 [2014]


著者の河合さんからご恵送頂きました.ありがとうございます.

アーレントの「始まり」論(ないし「活動」論)のポテンシャルを丁寧に見定めるご論文で,立憲主義やラディカル・デモクラシーへの関心からも興味深く読むことができると思います.

  • 河合恭平 [2014] 「H・アーレントのアメリカ革命論と黒人差別の認識――「始まり」の恣意性と暴力に関連させて」『社会思想史研究』38: 184-203.
    • はじめに
    • 一 アーレントの「始まり」論とその難問――主にアメリカ革命論との関係で
      • 1 「始まり」およびその恣意性と暴力について
      • 2 「始まり」の難問の解決策としてのアメリカ革命という「始まり」
    • 二 『革命について』におけるアーレントの黒人差別の認識
    • 三 「リトルロックに関する考察」におけるアーレントの黒人差別の認識
    • 四 「市民的不服従」論文における「始まり」論の展開――黒人差別との関連で
    • 結論
    〔社会思想史学会年報〕社会思想史研究no.38 2014 〈特集〉社会思想としての科学

Monday, December 29, 2014

2014年の政治思想


年の瀬ですので,一昨年昨年と同様,政治思想書の収穫を振り返ります.今年も内容に踏み込んだ紹介をする余裕がありませんので,備忘として研究の動向をメモしたものだとご了解ください.

なお偶然来訪された初学者の方などのために一言しますが,どういう研究が刊行されているかをきちんと知るには,学会誌の書評欄などにあたるのが確実です.刊行されてから学会誌に書評・紹介が載るまでにはタイムラグがあるものの,政治思想分野の主要な研究は,日本政治学会『年報政治学』(「学界展望」では論文も紹介),日本政治思想学会『政治思想研究』,社会思想史学会『社会思想史研究』の書評欄を眺めれば知ることができます.また,法学に関係する研究であれば『法律時報』毎年12月号の学界回顧で採り上げられることがありますし,人文・思想書は月曜社のブログで詳しく紹介されています.東京財団の政治外交検証プロジェクトは,政治外交史・国際関係を中心にしながらも,政治学・社会科学の幅広い新刊図書リストを作成・公開しています.

さて,以下便宜的に10点を挙げながら,関連する書籍に触れていきます.



今年最大のトピックは,この分野で初となる講座が発刊・完結したことでしょう(詳細目次はこちらから).昨年のこの企画記事で,テキスト類の充実化を指して「この分野の基礎がさらに厚みを増す」と書きましたが,本講座に凝縮されている研究蓄積を乗り越えていくのも大変そうです(完結記念シンポジウムでは,何年後かに同じ講座を新しく出すことへの希望も聞かれました).

基礎の厚みということで言えば,主だった思想家の概説+主著の抜粋から成る,杉田敦/川崎修 (編) 『西洋政治思想資料集』法政大学出版局が出版されたことも大きいでしょう.ほかに,上記講座とほぼ同じ時期を扱った単著通史として,坂本達哉『社会思想の歴史――マキアヴェリからロールズまで』名古屋大学出版会を見逃せません.古典の邦訳として,ホッブズ『ビヒモス』山田園子 (訳), 岩波書店(岩波文庫)が初めて出版されたこともニュースでした.レオ・シュトラウス『政治哲学とは何であるのか? とその他の諸研究』飯島昇蔵ほか (訳), 早稲田大学出版部もここで挙げておきます.



上記講座にも寄稿している著者による博論の書籍化です.18世紀フランスを扱っていますが,統治が直面する諸問題という観点において,現代にひきつけて読むことができるかと思います.

啓蒙つながりで言えば田中秀夫先生が昨年に引き続きご活躍で,田中秀夫『スコットランド啓蒙とは何か――近代社会の原理』ミネルヴァ書房に加え,大部の編著,田中秀夫 (編) 『野蛮と啓蒙――経済思想史からの接近』京都大学学術出版会を出されています.

欧米思想史ではほかに,柴田平三郎『トマス・アクィナスの政治思想』岩波書店,宇羽野明子『政治的寛容』有斐閣,原田健二朗『ケンブリッジ・プラトン主義――神学と政治の連関』創文社,桑田学『経済的思考の転回――世紀転換期の科学と統治をめぐる知の系譜』以文社などが目立った研究書でしょうか.論文集では,行安茂 (編) 『イギリス理想主義の展開と河合栄治郎――日本イギリス理想主義学会設立10周年記念論集』世界思想社が目を引きます.



日本政治思想で一冊挙げるとすれば本書でしょう.やはり博論の書籍化ですが,著者は大学院の先輩でもあることから,合評会を開催させて頂きました.本書でもやはり統治が大きなテーマになっており,山陽の思想を通じて政治への反省を迫られるという意味で,現代との接続が可能です.

ほかに,論争の歴史に注目した河野有理 (編) 『近代日本政治思想史――荻生徂徠から網野善彦まで』ナカニシヤ出版が話題を集めました.矢内原事件が当事者にどう見えていたかを検証した将基面貴巳 『言論抑圧――矢内原事件の構図』中央公論新社(中公新書)は,読み物としても面白く,しかし独特の感慨を残します.他の研究書として(政治史と言うべきでしょうが),佐藤健太郎『「平等」理念と政治――大正・昭和戦前期の税制改正と地域主義』吉田書店があります.



政治理論分野での最大のトピックは(上記講座を抜きにすれば)本書刊行でしょう.経済学や社会学,思想史,あるいは経験的な政治分析など,隣接分野からの多角的な視点によって政治理論のあり方について検討が加えられています.日本政治学会での関連セッションも盛況でした.私の専攻分野でもありますので,可能ならそのうち感想を書きたいと思います.

既発表の論文が中心ではありますが,森政稔『〈政治的なもの〉の遍歴と帰結――新自由主義以後の「政治理論」のために』青土社が出版されたのも大きなニュースでした(こちらも検討したいと思いつつ果たせずにいますので,そのうちに).趣の違うところでは,吉田徹『感情の政治学』講談社(講談社選書メチエ)を挙げられます.感情への注目は色々な分野で今まさに開拓されているさなかのテーマですので,今後の議論の先駆けになる一冊かなと思います.

ほかに,翻訳で著名なものが幾つか出ています.キャロル・ペイトマン『秩序を乱す女たち? ――政治理論とフェミニズム』山田竜作 (訳), 法政大学出版局,マイケル・ウォルツァー『解釈としての社会批判』大川正彦/川本隆史 (訳), 筑摩書房(ちくま学芸文庫),アイリス・マリオン・ヤング『正義への責任』岡野八代/池田直子 (訳), 岩波書店,スティーヴン・マシード『リベラルな徳――公共哲学としてのリベラリズムへ』小川仁志 (訳), 風行社,ロナルド・ドゥオーキン『神なき宗教――「自由」と「平等」をいかに守るか』森村進 (訳), 筑摩書房,ユルゲン・ハーバーマスほか『公共圏に挑戦する宗教――ポスト世俗時代における共棲のために』箱田徹/金城美幸 (訳), 岩波書店,エルネスト・ラクラウ 『現代革命の新たな考察』山本圭 (訳), 法政大学出版局など.



国際政治思想の著作では,まず本書と古賀敬太『コスモポリタニズムの挑戦――その思想史的考察』風行社を挙げておきます.いずれも,久々に登場した「政治理論のパラダイム転換」シリーズの新刊です.ほかには論文集として,高橋良輔/大庭弘継 (編) 『国際政治のモラル・アポリア――戦争/平和と揺らぐ倫理』ナカニシヤ出版と宇佐美誠 (編) 『グローバルな正義』勁草書房が出ています.



ここからは個別分野からは離れて.本書は,「政治理論のパラダイム転換」と同じく風行社が立ち上げた新シリーズ,「選書〈風のビブリオ〉」の一冊として刊行されています.同シリーズでは,早川誠『代表制という思想』風行社が先に出ていますが,いずれも劣らず良書です.特に本書は,アリストテレスやアクィナスからスミス,ヘーゲル,マルクス,ひいてはロールズやハーバーマスまで,労働と福祉を軸にした思想史をコンパクトに辿ることができるという意味で,類書を見出しにくいかと思います.



昨年触れた宇野重規『民主主義のつくり方』はプラグマティズムを重視した点に特色がありましたが(宇野先生は上記講座にもプラグマティズムの章を執筆しています),その影響もあってか,プラグマティズム関連本の出版ラッシュが続いています.原典では上記古典集成のほかに,ジョン・デューイ 『公衆とその諸問題――現代政治の基礎』阿部齊 (訳), 筑摩書房(ちくま学芸文庫).その他,コーネル・ウェスト『哲学を回避するアメリカ知識人――プラグマティズムの系譜』未来社,ジョン・P. マーフィ/リチャード・ローティ『プラグマティズム入門――パースからデイヴィドソンまで』高頭直樹 (訳), 勁草書房など.



今年を振り返る上で,映画『ハンナ・アーレント』公開に伴って継続していたアレントブームを外すことはできないでしょう.本書のほかにも,入門書として仲正昌樹『ハンナ・アーレント「人間の条件」入門講義』作品社,川崎修『ハンナ・アレント』講談社(講談社学術文庫)が,研究書としてパトリシア・オーウェンズ『戦争と政治の間――ハンナ・アーレントの国際関係思想』中本義彦/矢野久美子 (訳), 岩波書店が出ています.

アレントとは違いますが,フランクフルト学派とハーバーマスをここに挙げておきましょう.細見和之『フランクフルト学派――ホルクハイマー、アドルノから21世紀の「批判理論」へ』中央公論新社(中公新書),木前利秋『理性の行方 ハーバーマスと批判理論』未來社,ユルゲン・ハーバーマス 『自然主義と宗教の間――哲学論集』庄司信/日暮雅夫/池田成一/福山隆夫 (訳), 法政大学出版局.



「一般意志2.0」との関係を云々しなくても近年ルソーへの注目は高くあり続けていると思いますが,本書はルソー研究の最前線をうかがうために必読でしょう.永見文雄/三浦信孝/川出良枝 (編) 『ルソーと近代――ルソーの回帰・ルソーへの回帰』風行社は,ルソー生誕300周年記念シンポに基づく論文集.



最後に,今年に始まった話ではありませんが「保守」ということが関心を集めていますので,ハイエクの研究書を挙げておきます.ハイエクについては上記講座にも山中優先生が寄稿しており,さらに本書著者と山中先生がどちらも執筆している,桂木隆夫 (編) 『ハイエクを読む』ナカニシヤ出版も出版されています.関連で,ジェレミー・シアマー/ピアズ・ノーリス・ターナー (編) 『カール・ポパー 社会と政治――「開かれた社会」以後』神野慧一郎/中才敏郎/戸田剛文 (監訳), ミネルヴァ書房を挙げておきます.

保守主義については,佐藤一進『保守のアポリアを超えて――共和主義の精神とその変奏』NTT出版が出ています.入門書として,仲正昌樹『精神論ぬきの保守主義』新潮社.


それでは,よいお年を.

Sunday, October 12, 2014

御礼: 大井 [2014]


日本政治学会(於:早稲田大学)にて,著者の大井さんから頂戴しました.ありがとうございます.

特集「リベラルの言説――批判的検証」の一部ということで,國分功一郎『来るべき民主主義』の評を通じて,「玉石混交の「リベラル」言説に対する審美眼の構築を目指す」ご論考となっています.

  • 大井赤亥 [2014. 7] 「「リベラル」を見極める審美眼のために」『季刊ピープルズ・プラン』65: 42-49.
    • 1 はじめに――「リベラル」の定義について
    • 2 「リベラルの言説」と民主主義論
    • 3 小平市での都道建設問題と住民投票
    • 4 主権と立法権をめぐる政治哲学の「欠陥」
    • 5 制度の多元性と住民投票
    • 6 結論――「リベラル」を見極める審美眼を

Tuesday, July 22, 2014

御礼: 杉田 [2014]


こちらはもっと前になりますが,杉田敦先生から,ご編著の岩波講座4巻を頂戴しておりました.ありがとうございます.

ル・ボンについて書かれているということに多少の驚きがあったのですが,読んでみると非常に引き込まれ,得心するところがありました.

  • 杉田敦 [2014] 「ル・ボン――群衆の登場」杉田 (編) [2014: 1章].
  • 杉田敦 (編) [2014] 『国家と社会』岩波書店(岩波講座 政治哲学 4).
    • 序論(杉田敦)
    • I 大衆と組織
      • 1 ル・ボン――群衆の登場(杉田敦)
      • 2 ウェーバー――カリスマの来歴と変容(野口雅弘)
      • 3 ソレル――主体の変容と想像力(金山準)
    • II 自由主義と社会主義
      • 4 多元的国家論――伝統と革新による自由の実現(早川誠)
      • 5 ケインズの政治哲学――経済学における社会と国家(間宮陽介)
      • 6 20世紀前半のマルクス主義――「等価性の世界」における形式と規律(西永亮)
      • 7 ヘゲモニー論の系譜学――グラムシと現代政治思想(中村勝己)
    • III 共同性と政治
      • 8 シュミット――自由主義批判のジレンマ(大竹弘二)
      • 9 ハイデガー――存在論的政治の可能性(小林正嗣)
      • 10 シュトラウス――著者の責任と読者の責任と(飯島昇藏)

御礼: 山本 [2014]


しばらく前になりますが,山本卓先生から,ご高論が収められた岩波講座3巻を頂戴しておりました.ありがとうございます.

最近になって,この時期の思想について勉強し直す必要を強く感じておるところです.

  • 山本卓 [2014] 「社会民主主義――J. A. ホブスンにおける社会主義と民主主義」宇野 (編) [2014: 10章].
  • 宇野重規 (編) [2014] 『近代の変容』岩波書店(岩波講座 政治哲学 3).
    • 序論(宇野重規)
    • I 自由主義の多様性
      • 1 ベンサム――功利主義における倫理と統治(小畑俊太郎)
      • 2 ジョン・スチュアート・ミル――功利主義と代議制(小田川大典)
      • 3 コンスタン――立憲主義の基礎づけを求めて(堤林剣)
      • 4 トクヴィル――権威と自由をめぐる考察(高山裕二)
    • II 社会思想の諸展開
      • 5 プルードンとアナーキズム――〈政治的なもの〉と〈社会的なもの〉(森政稔)
      • 6 ナショナリズム――国民国家とは何であったのか(杉田孝夫)
      • 7 ニーチェ――「神の死」以降の宗教と国家(鏑木政彦)
    • III 新たなる紐帯の模索
      • 8 プラグマティズム――習慣・経験・民主主義(宇野重規)
      • 9 連帯の思想――福祉国家の哲学的基礎(田中拓道)
      • 10 社会民主主義――J. A. ホブスンにおける社会主義と民主主義(山本卓)



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